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ごっこから何が生まれるのか
第2章 恋人ごっこ。
こうして始まった恋人ごっこ。
手を繋いでいない方の手で酒を飲む。ペースが早いのは自覚していた。手を繋いでから会話が少し減ったのも分かる。
「高木さんって煙草吸うんですね」
彼は俺の胸ポケットをトントンとした。
「あ、吸いますね。でも倉敷さん吸わなさそうだったからやめておいたんです」
トントンとされた所に神経が集中する。平然を装ってみてはいるが内心緊張していた。一度はベットを共にしたと言うのに。
「俺も吸いますよ?」なんて
鞄から取り出しヒラヒラと見せつけると机に置いた。
「だから気兼ねなくどうぞ」と
俺の胸ポケットから煙草を取り出し、1本だけ手に取ると口元にあてがう。それを口に咥えライターに手を伸ばすと、制止された。不思議に思い彼を見れば、彼も自身の煙草を咥え火を付けた。
「こういう事してみたかったんです」と
まだ火の着いてない俺の煙草先にあて、すぐさま理解した俺はスゥっと吸って火を付けてみせた。嗚呼これが彼のしたい恋人ごっこなんだなと。
変わらず手は繋がれたまま
とても奇妙な光景だ。
いい歳した大人の男性2人が個室で手を繋ぎ
煙草を吸いながら笑っているのだから。
「恋人ごっこの続きしてもいいですか?」
それは、さっきの提案にあったものだと思っていいのでしょうか。手を繋いだり、キスしたり、と言う彼の言葉が脳内でリピートされる。
「えっと、あの。はい。続き、大丈夫です」
キスなんて確信は無かったが、彼の動きに合わせお互いがひとつの灰皿で火を消すと、繋がれていた手が離され腰に移り引き寄せられた。一気に距離が縮まると恥ずかしさからか自然と顔が下を向いてしまう。彼はそれを許さずもう片手で顎を持ち上げられた。
「…っ」
「高木さん?恥ずかしいです?」
「す、少し…だ…っん」
最後まで言い切る前に唇が重なった。
たった数秒の出来事なのに随分時間が経った気がした。
「ふみや」急に名前を呼ばれ
「もっとしたい?」なんて聞かれ
「おいで」と再度腰を引き寄せられれば
再び唇は重なり、さっきよりも長く。
触れるだけではなく、角度を変え吸われ。
湿った唇は物足りなさを残し、ゆっくりと離れた。