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ごっこから何が生まれるのか
第2章 恋人ごっこ。
「酔っちゃいました?」なんて
頭をクシャクシャされ、赤らんだ顔を誤魔化す様に煙草を手に取り、今回は自ら火をつけた。
慣れてるんだろうな。と思いながら
煙をゆっくり吐き出してみた。
店を出ると彼は時計を見た。
振り返り数歩後ろを歩く俺に尋ねる。
「この後どうします?」間を開けず続けて
「もう1件行きますか?」それから間を開けて
「それとも、ホテル…行きますか?」と。
近寄り手を握られ耳元で囁くんだ。
「それとも、ホテル…行きますか?」と。
同じ台詞なのに先程より熱い。彼の吐息が耳にかかり瞼が自然と落ち「ホテルに」と小声で答えていた。繋がれた手は強く握られ、耳に軽く唇が触れ小さなリップ音が脳まで響く。
すっかり人通りが減った街並み。会社付近と言う事もあり裏路地に向かった。普通にホテルに向かう方が早いに決まっているのに、手を繋いで歩く訳にはいかないからと。彼には手を離して歩くという選択肢は無いらしい。
「文弥ここでキスして?」
裏路地に入り暫くすると手を引かれ距離を詰めてきた。
「え…っ、ここで…ですか?」
困った顔をしてる俺を見て口角を上げた。周りを見渡せば人は居ない。人が居ない事を彼も分かっていて言ったに決まっている。固まったままどうする事もできずに静かに時間は流れいく。一組の男女のカップルがやってきた。横を通り過ぎる時にチラっとこちらを見たのが分かった。
「ホ、ホテル行ってから…じゃ、ダメですか?」
「今したいと思ったから、ほら今なら誰も居ない」
先程のカップルはもう遠くに行ってしまい足音もしない。
悩んでいても仕方がない。
意を決して少し、本当に少しだけ踵を浮かせ唇を重ねにいった。軽めのリップ音をたて唇を離すと、後頭部に手があてられ再び重なる。半開きになった唇。彼の舌が侵入しそれを受け入れる様に舌を絡めた。
「んっ、ハァ…」
リップ音だけではなく、水音が響く。湿った音。
長くは続かなかったが、体が反応するには充分な時間だ。