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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第29章 【第二十九話】建国祭
 * * * * *

 あっという間に建国祭の日がやってきた。
 その日はいつもどおりに起きて、朝ご飯を食べた後、いつもとは違う服を着せられた。
 白のシャツに黒のズボン。髪はアップにされ、軽めの化粧。そこに黒のキャスケットを被せられた。

「うむ、なかなか似合うな」

 そう言って現れたのは、こちらは黒のシャツに黒のズボン、そしていつもは流している髪を一つに結んだルードヴィグ。マントを羽織ってない姿が新鮮だ。

「全身、黒」
「いつもどおりだ」

 ルードヴィグはセラフィーナの手を取ると、額に口づけした。

「セラフィーナ、今日は建国祭を見学に森の奥から出てきた新婚夫婦という設定だ」
「それ、真実。わざわざ設定というほどのこと?」
「一応、確認もある。俺はルード、セラはセラだ」
「ん」
「二人で出掛けるが、何人かの魔族の護衛がついている」
「ん」
「他になにか質問や確認は?」
「ない。たぶん大丈夫」
「セラは俺の手を離さないこと」
「ん」

 そう言われて、セラフィーナはルードヴィグの手をしっかり掴み直した。

「では、行くか」
「ん」

 移動魔法で飛ぶのは、ラートウトル王国の首都であるミスオン。王城があるのはミスオンの中心部だ。
 ルードヴィグの部下の調査によれば、今年の建国祭はいつもより規模が大きく、特別に城門が開放され、中へ入れるようになっているという。
 そして今年の目玉は、開放された王城のバルコニーから国王と妃がそろって顔を出すというものがあるらしい。
 その催し物だが、どう考えても今回のルードヴィグの作戦と関係がありそうで、思わずセラフィーナはルードヴィグを見上げた。

「ルード」
「なんだ」
「どれだけ魔族を王宮に送り込んでるの」

 今回の件が起こる前から送り込んでいないと起こせないだろうことに、セラフィーナは白い目でルードヴィグを見た。

「十名ほどだな」
「乗っ取る?」
「そんなつもりはない。人間側の動向を知らなくてはこちらも対処できないからな」

 魔族を守るためらしいが、セラフィーナはいまいち信じられない。

「一時期、アリシアにも王城の動向を探ってもらっていた」
「それで私の後見人に?」
「そうだ」
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