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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第32章 【第三十二話】魔性の女
 セラフィーナはそう言って、ようやく笑った。

「私ね、ルードに嫌われないか、それだけが心配だったの」
「俺がセラを嫌う?」
「うん。だって、自分の両親が死んだことを喜ぶような人間よ? おかしいじゃない」

 それならば、とルードヴィグは返す。

「セラの両親を殺すように命じた俺はセラに嫌われるのか」
「そんなことない! むしろ、私のために嫌なことさせたって申し訳ないって思う」
「俺はセラを護るためならなんだってする。それくらい、セラのことが好きなんだ」
「あ……。私、ルードから初めて好きって言われたような気がする」
「ん? そうか?」
「だって、私は何度もルードのことが好きって伝えてるのに、ルードからは返ってきたことがなかったよ」
「そうか。すまぬ。俺はセラフィーナのことを愛してる」

 初めてはっきりと伝えられた言葉に、セラフィーナは笑った。

「うん、私もルードヴィグのこと、愛してるよ」

 そして、口づけをしようとしたところで朝食が整ったと知らされる。
 お互い、顔を見合わせて笑った。

「……とりあえず、ご飯にするか」
「ん」

 せっかくの甘いムードが壊れたのは残念だが、いつまでもいちゃいちゃしていられないのも事実。
 二人はベッドから降りて、準備を始めた。

 いつもどおり、二人は手を繋いで執務室へ行き、執務を始めようとしたのだが、緊急で目通りをしてきた者がいたため、応接間に移動した。
 すでに先日の片付けはされていて、いつもどおりに綺麗になっていた。

 二人が部屋に入ると、一人の男性と一人の女性が立ったまま待っていた。
 ルードヴィグはその二人に心当たりがあるようで、不快な表情を露わにしていた。セラフィーナは訳がわからないが、その二人からは決して好意的ではない、むしろ敵意溢れる視線を向けられ、内心、ため息を吐いていた。

「それで、急ぎの用とは?」

 ルードヴィグも座ろうとせずに、扉の前で口を開いた。
 それを見て、相当嫌な相手なのであろうとセラフィーナは察した。

 ルードヴィグの質問に、男性はセラフィーナを指差し、口を開いた。

「陛下、その女は魔女ですぞ!」
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