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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第35章 二*心と身体の乖離
 それからアーベルと会うことがなかった。
 たまたまなのか、避けられているのか分からないが、ルードヴィグの部屋でアリシアは待機していたが、会わなかった。

 あの気持ちよさが忘れられず、アリシアは手当たり次第に魔族の男と寝た。積極的に攻めてみたが、それでもあの気持ちよさは得られなかった。むしろ、アーベル以外の男に触られることに嫌悪を覚え始めていた。

「アリシア、今日は?」

 前に寝た男が、そう声を掛けてきた。
 あまりいいとも思えなかったし、魔力の回復も悪かった。
 だか、男は違ったようだ。

「なんなら、蜜月を前提に──」

 冗談ではなかった。
 だから断ろうと口を開きかけたそのとき。
 アリシアの後ろから冷ややかな声が聞こえてきた。

「その女は、そんなにいいのですか」
「アーベルさま」

 男の顔は青ざめていた。
 アリシアは振り返ろうとしたが、アーベルの怒気を背中に感じて、できなかった。

「アリシア」

 明らかに怒っている声。
 アリシアはアーベルがどうして怒っているのか、分からなかった。

「どういうことですか?」
「どうもこうもありません、見たままです」
「ほう? 私の処理係なのに、よそで男を引っ掛けていたのですか」
「あなたには関係ありません」

 アリシアとアーベルの冷たいやり取りに、男はさらに青ざめていた。

「アーベルさまのものとは思わず……! そ、その女から誘ってきたんだ! おれは、悪くない!」
「それならば、もう姿を現すな!」

 アーベルの一言に、男は足をもつらせながら去っていった。

「この様子では、他にも手を出したな?」
「それがなに?」
「身体をしつけないといけないようだな」

 アーベルはアリシアの背後から抱きしめると、スカートを捲り上げた。

「アーベルさま!」

 少し奥まっているとはいえ、ここは人の往来がある廊下。
 さすがにこんなところで事に及ぶとは思わず、アリシアは名を呼んだ。

「煩い、だまれ」

 アーベルはアリシアを壁に押しつけると、腰を押しつけた。

「ほう、言いつけを守って下着は着けてないのか」
「それはっ!」
「淫乱だな」
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