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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第37章 【番外編:二】セラさまは罪深い
 そこで初めて、人間と意見が合った。

 そしてイェリンは、魔族も人間も変わらないことに気がついた。
 そうなると、人見知りをしないイェリンが慣れるのもすぐだった。

 セラさまは基本、手が掛からない人だった。
 お世話なんて必要ないのではないかと思ったが、色んな事情があってそういうわけにもいかないから置いてあるみたいだった。
 仕事に慣れると、時間が余った。
 基本はセラさまの用事に合わせて待機していたが、明らかに人手が余るときは勤務時間内でも自由行動を許された。
 そして、セラさまはイェリンたちのことを気に掛けてくれた。

「イェリン、今日はもういいわよ」
「え、でも」
「明日は休みでしょう? 少し早いけど、休みなさい」

 イェリンはハンナの言葉に甘えて、早上がりした。



 休みといっても、予定はない。
 前に一人で街に行って、散々な目に遭ったので、出掛ける気にもならない。
 最近は魔法を使うことがないから魔力の消耗はそれほどでもないが、それを抜きにしても、淋しい。

「だからって」

 魔族は魔力の回復手段として、快楽を得る。それはどんな方法でも構わない。
 快楽を得られるのなら、一人で身体を慰めても問題ないのだ。だけどイェリンはその方法があまり好きではなかった。
 さらには、そういう相手を探す場所というのもあるし、イェリンは何度か利用したことがあるけれど、あまり快楽を得ることができなかった。
 そこに行こうかと思ったけれど、今度もまた、快楽を得られなかったらと思うと億劫になる。

 そんなことを思いながら歩いていたからか、廊下で人とぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさいっ!」

 向こうも前を見ていなかったらしく、イェリンと思いっきりぶつかっていた。
 しかも相手は書類を持っていたらしく、廊下に紙がひらひらと舞っていた。

「大変!」

 イェリンは慌てて魔法を唱え、宙を舞う書類をかき集めた。
 それは見事に集まってきて、地面に落ちることなく、すべてイェリンの手におさまった。
 イェリンは書類を整えて、びっくりして尻もちをついている人に書類を差し出した。

「申し訳ございません」
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