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第4章 【第四話】魔王のお食事とセラフィーナの嫉妬

　セラフィーナはルードヴィグにしがみつくと、いやいやと首を振った。

「お願いだから、私以外の人とあんなこと、しないで」
「あー……」
「それとも、私では不満？」
「いや、もうセラ以外から食事をしたいとは──」
「それなら！　私、帰らない！」
「セラ？」
「ルードのことが好きなの」

　その一言に、ルードヴィグはため息を吐いた。

　ルードヴィグとしても、本当は帰したくなかった。だが、いきなり連れ去ったのだ、セラフィーナの家族が心配するだろうと思い、戻ってきたのだ。
　それを帰らない、とは。

「そういうわけにはいくまい」
「でも！」
「セラフィーナさま！」

　聞き覚えのある声に、セラフィーナはハッと振り返った。
　そこにはセラフィーナの世話役兼護衛のレンナントがいた。

「探しましたよ、セラフィーナさま。……っと、だれですか、その男はっ！」

　レンナントの疑問にセラフィーナはルードヴィグを背後にして、両手を広げた。

「黒髪に黒い瞳……。きさま、魔王か！」
「よく気がついたな」
「魔王……？」

　セラフィーナはレンナントとルードヴィグのやり取りに、首を傾げた。
　セラフィーナが知っている魔王は、黒髪に黒い瞳をしていて、人間を見たらすぐに殺すほど残虐だと聞いていた。
　確かに、ルードヴィグの見た目は黒髪に黒い瞳だが、残虐ではない。

「レンナント、違うわ」
「セラフィーナさま、危険です！　早く離れてください！」

　セラフィーナは違うと首を振ったが、背後のルードヴィグはセラフィーナの肩を掴むとセラフィーナの横に立った。

「ルード？」
「セラフィーナ、というのか」
「え、と。はい」
「かわいい名前だ」

　ルードヴィグはレンナントに視線を向けた。レンナントの身体がビクリと揺れた。

「【食事】をした」
「！」
「意味は分かるよな？」

　レンナントの表情が強張ったところを見て、セラフィーナは唇をかんだ。

「セラフィーナさまを食うとは、身の程知らずめ！」