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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第47章 九*騙し討ち
 ケヴィンはヴィクトルが予想どおりの言葉を口にしたことに内心は喜んでいたが、頑張って表情に出さず、困ったように眉を下げてみせた。

「それも合わせての説明なんだが」
「いいから、早くペン。で、最後に署名すればいいんだな?」
「おい、待てって。説明を──」
「いいって言ってるだろう」

 そう言ってヴィクトルは、書類の乗ったトレイを机の上にひっくり返し、一番下にあった紙を引っ張り出した。
 ヴィクトルの予想どおりにそれは署名をする場所が二ヶ所あり、上はヴィクトルが書くのだろう、そこは空欄になっていて、下にはすでにアルベルティーナの署名があった。

「以上の内容に異議はありません?」
「内容を聞いていないのに異議があるかないか、分からないだろう」
「おれの予想では、子どもの父親であることを認めるが親権を主張しないだとか子どもの財産は子どものものであるだとかそういう内容だろう?」
「中身を読んでないのにそう書かれているかどうか、分からないだろう」
「だが、この内容すべてを確認していたら今日中に終わらないだろうが!」

 ヴィクトルは次第にイライラしてきたようで、署名の紙を机に叩きつけた。

「まったく、こんなだったらおれが書類を作ればよかったぜ」

 ヴィクトルは不機嫌な表情でペンを取り、空いていた場所に署名をしてしまった。

「ヴィクトル」
「なんだ」

 ケヴィンはヴィクトルから署名をした紙を受け取り、きちんと署名がされていること、それが問題なく今から効力を発揮していることを待機していた専門家に確認させると口を開いた。

「今、署名したな」
「した。帰っていいか?」
「アルベルティーナ」
「はい」
「この書類がどんな内容だったかヴィクトルに説明を」
「だから──」

 アルベルティーナはヴィクトルの手を取ると、椅子に座るように促した。ヴィクトルは首を振り、着席を拒否。

「あなたが座らなくても、あたしは座るわ」

 ヴィクトルの手を持ったまま、アルベルティーナは椅子に座ると口を開いた。

「今の書類、婚姻契約の紙ですわ」
「…………は?」
「お腹の中の子の父親であることを認知するだけの書類がこんなに分厚いわけがないじゃない」
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