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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第49章 十一*求婚
 ヴィクトルはアルベルティーナに促され、かごに近づいて覗き込んだ。
 そこには、アーベルから伝え聞いていたとおりの赤ん坊が寝ていた。

「感想は?」
「……小さいな」
「あら、それだけ?」
「赤ん坊を見るのが初めてだから、なんと思えば良いのか分からない」

 そう考えてみると、本当に魔族は子どもが出来にくいのだなと実感した。

「まぁ、いいわ。とりあえず、座ってちょうだい」

 アルベルティーナに座るように言われ、ヴィクトルは大人しく向かいに座った。

「それで?」

 アルベルティーナはそれだけ言うと、口を閉じてヴィクトルを見た。
 ヴィクトルはアルベルティーナの紫の瞳はなにもかも見透かしているようだと思った。

「あー、その……」

 アルベルティーナに改めて聞かれると、ヴィクトルはなにから言葉にすればいいのか分からなくなった。
 いや、そもそもなにを望んで飛び出してきた?

「ねぇ、ヴィクトル」

 ヴィクトルが悩んでいると、アルベルティーナは笑いながら口を開いた。

「そんなに難しく考えなくてもいいと思うんだけど」
「そうは言うが」
「じゃあ、あたしから言うわ」
「……どうぞ」

 ヴィクトルは決して口下手ではない……と思う。だけど、アルベルティーナを前にすると上手く言葉に出来ない。

「あたしと結婚して、アウグストの正式な父親になって」
「……は?」
「じゃないとあたし、ケヴィンと結婚させられちゃうのよ」
「話には聞いていたが、本当だったのか」
「えぇ、本当よ。しかもあいつ、ないくせに子作りするとか言っちゃってさ。ヴィクトル以外は無理って言ったんだけど、引かなくて」

 だからというわけではなくて! とアルベルティーナは慌てた。

「あ、なんか誤解を生む言い方だけど、別にアウグストがいなくてもあたしはヴィクトルに結婚を申し込んだわ」
「は?」
「あたしのこと、王族扱いしないところとか、つまんない話にも律儀に付き合ってくれるし、ツッコミ入れてくれるし!」
「ぉ、ぉぅ」
「それに、あたしの初めての人だし」
「っ!」

 そう言って、真っ赤になって俯くアルベルティーナに、ヴィクトルの下半身が反応した。

「おまえな……」
「あー、そんな色気ダダ漏れの視線を向けられても今は無理だから!」
「……はぁ、辛い」
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