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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第9章 【第九話】淋しい気持ち
 ルードヴィグはセラフィーナの名を甘く囁き、それから膝の上に抱き上げた。
 まだ服を着ていないため、素肌が重なり合う。

「泣きたいのなら、泣けばいい」
「…………」
「俺が悲しませてしまったか?」
「ち……が、う」
「それなら、なにが悲しかった?」

 セラフィーナは淋しかったからとは言えなくて、口ごもった。
 ルードヴィグのお食事係になる、ルードヴィグと結婚すると初めてわがままを言ったけれど、それまではセラフィーナは我慢ばかりしてきていた。
 思ったことはいつも胸にしまいこんできたため、セラフィーナは自分の感情を表に出すのが苦手だ。
 ましてや、今、自覚した感情を口に出すのはためらわれる。

 だけど、とセラフィーナは思う。
 ルードヴィグへの想いはするりと口に出来た。
 それは溢れるほど強い思いだった、ということか。

「セラ」
「ん」
「その『ん』というのは口癖か?」
「ん?」

 ルードヴィグの質問に、セラフィーナの涙は少しだけ引いた。

「セラは……。まぁ、いい。涙が止まるまで、待ってやる」

 ルードヴィグはそう言うと、冷え始めたセラフィーナの身体を抱きしめた。

「少し寒いか」

 ベッドの上のシーツを剥がし、ルードヴィグはセラフィーナを包んだ。

「泣きたければ、俺の腕の中で泣けばいい」
「ん」
「我慢することはないからな」

 ルードヴィグはセラフィーナの頭を抱え、撫で始めた。
 それはとても気持ちが良くて、セラフィーナの涙がまたもやあふれてきた。

「セラは一人で頑張りすぎだ」

 ルードヴィグがセラフィーナの境遇をどこまで把握しているのか分からないが、囁き、甘やかすように頭を撫で続けた。

 ルードヴィグはしばらくセラフィーナを撫でていたが、穏やかな寝息が聞こえ始めた。泣き疲れたらしい。

「やはり疲れていたか」

 ルードヴィグはセラフィーナを起こさないように身体を動かして寝かせようとしたが、セラフィーナがしがみついていて、ベッドに一緒に横になるのが精一杯だった。

「……生殺しか」

 セラフィーナの顔には涙の跡があったが、今は穏やかに眠っている。
 しがみつかれている肌は素肌。
 滑らかなセラフィーナの肌を感じて、おさまっていた衝動が湧き上がってくる。
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