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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第16章 【第十六話】お茶
 ルードヴィグは書類を片づけて、セラフィーナに近寄った。
 セラフィーナはルードヴィグが来たところで、別の茶器にポットの中身を注いだ。

「この匂いは……」

 お茶から漂うわずかなえぐみをともなった独特な香り。
 それはすぐに消えたが、二人は知っていた。

「毒草か」
「ん」

 森の中に普通に生えているうえ、薬草と間違えやすい草ではある。
 しかし、あくまでも薬草であり、お茶には適さない。

「これを準備した者を呼ぼう」
「ん」

 ルードヴィグはすぐに外で待機している者にお茶の準備をした者を探すように命令をしたのだが、反応が芳しくない。
 部屋になかなか戻ってこないルードヴィグに不思議に思い、セラフィーナは廊下に顔を出した。

「どうしたの?」
「うむ」

 ルードヴィグは困惑した表情を浮かべていた。

「あのお茶だが」
「ん」
「俺の母が用意したというのだ」
「ん?」

 ルードヴィグの母親が毒草を用意したのが事実ならば。

「…………」

 セラフィーナは肉親に対して嫌悪感を抱いている。
 それを助長させる行為にルードヴィグは怒りを覚えた。

「セラ」
「私」

 ルードヴィグはセラフィーナが次になにを言うか分かったため、急いで部屋へと戻ろうとしたのだが、廊下の向こうが騒がしくなったため、そちらに視線を向けた。

「ルードヴィグ!」

 そこには、ルードヴィグの父と母がいた。
 ルードヴィグとは違い、二人とも茶色の髪に茶色の瞳をしていた。

「もう、なんで知らせてくれないの!」
「あ、あぁ。二人とも、今日帰ってくると聞いていたから」

 なんとタイミングが悪いのだろうとルードヴィグは内心で思いながらセラフィーナを見た。

「あの二人が、ルードの両親?」
「そうだ。魔族の村や町を巡回している」

 セラフィーナがどう思ったのか分からないが、表情は動かなかった。

 ルードヴィグは二人を執務室の隣の応接間に入ってもらった。

「セラフィーナ」
「ん」
「俺はあの茶は母が用意したものとは思っていない」
「ん」
「なぜなら」
「外に出ていたから?」
「そうだ。それに、母はそういったことに気が利かない」

 それもどうかと思ったが、その辺りはいくらでも偽れる。

「まず、話を聞こうと思う。どちらにしても、会わせる予定であったしな」
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