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恍惚なる治療[改訂版]
第8章 沼に溺れる
残りの下書きを完成させ、編集の田宮さんに原稿を見せて、修正箇所を書き直して2週間がかりで原稿が完成し、仕事がひと段落付いた。
「はぁ、疲れた…」
眼鏡を外して目元をグリグリと揉み込む。
ずっと部屋に篭りきりでパソコンと睨めっこをしていたので、目の疲労が酷くて頭が重い…
「もう8時半か…」
伸びをして立ち上がり、キッチンで晩飯の準備をする。
冷蔵庫で解凍していた生姜ダレに漬け込まれた豚肉をフライパンに並べていると、カウンターに置いてあるカレンダーが目に入った。
柳川先生と会ってから2週間経ったのか…
柳川先生とはラインで連絡を取り合うが、次に会う予定の話は全くしていない。
柳川先生も医師で忙しい人だから、出掛ける暇も無いのだろうと自分に言い聞かせながらも、少し心がモヤモヤしている…
モヤモヤの正体が何なのか分からないまま、香ばしい匂いを漂わせる豚肉を盛り付けていると、柳川先生からラインが入った。
[お疲れ様です。今お時間大丈夫ですか?]
柳川先生からのラインに少しモヤモヤが消えたのを感じながら返信する。
[大丈夫ですよ]
返信するとすぐに先生からライン電話が掛かってきた。