この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恍惚なる治療[改訂版]
第8章 沼に溺れる
「…もしもし」
電話をするのは初めてなので、少し緊張して声が震えた。
『もしもし、お仕事お疲れ様です』
「はい、ありがとうございます。柳川先生は…」
「僕ですか?さっき終わりました。佐伯さんは何してますか?』
「さっき原稿を完成させて、今から晩飯です」
電話越しに聞こえる柳川先生の優しい声色に少し安心した。
スピーカーに切り替えて、ご飯とインスタントの味噌汁を用意して食卓に並べる。
『すみません、お食事中だったんですね。佐伯さんがよろしければ、食べながら話しませんか?』
「いいですよ」
普段なら食事をしながら通話なんてしないが、たまには良いかと思って了承した。
『生姜焼きなんですね、メニュー聞いたらお腹空いてきた…』
「柳川先生は何食べるつもりなんですか?」
『スーパーで買ったみじん切り野菜の賞味期限が近かったんで、それを使って炒飯でも作ろうかなーって』
炒飯も良いな…と思いながら、話に花を咲かせていると、柳川先生に仕事について確認された。
『原稿終わったって事は…もう誘っても良いって事ですよね?』
「え?食事ですよね、大丈夫ですよ」
『でしたら、今週の日曜日はいかがですか?』
「日曜…予定は入ってないので行けますよ」