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恍惚なる治療[改訂版]
第8章 沼に溺れる
改めて柳川先生をよく見ると仕立ての良いジャケットを着用している。
前回はパーカーだったが今回はシックな装いで、どことなく仕事中の雰囲気を思い出した。
「ジャケット着てますけど、今日の店って高い店なんですか?」
「いえ、高いお店では無いんですが、開店したばかりのオシャレなお店らしいので、ちょっとオシャレしてきました」
ー似合ってますよー
喉の辺りまで出掛けたその言葉が、口に出せずに胃の中に落ちていく…
俺だって言おうと思えば言えるはず…なのに…
変な気恥ずかしさが邪魔して言葉に出来なかった。
「そうなんですね。それは楽しみだ」
褒め言葉1つ言えない臆病な自分に自己嫌悪しつつ、柳川先生の隣に立って歩く。
「適当にブラブラしましょうか。お互い気になったお店に入って時間でも潰しましょう」
「はい…」
歩いていると、ふとガラスに映った2人の姿を見て立ち止まった…
周りから見たら、俺達は仲の良い友達に見えるのだろうか…
それとも…