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恍惚なる治療[改訂版]
第8章 沼に溺れる

「どうかしましたか?」
「いえ」

柳川先生は本当に俺なんかと恋人になるつもりなのだろうか…
彼なら、素敵な女性が似合ってるはずなのに…

ぼんやりと考えていると、前方から歩いてくる女性とぶつかりそうになり、避けて身体がフラついた。
大通りとは言え、休日で人も多い。
今の状態で接触すれば、発作が起こるかもしれない…

「先生、ちょっと待って…」
「すみません、先に行ってしまって…」

謝罪して立ち止まってくれたが、先生は少しの間無言になった。

「あの…」
「…そろそろ『先生』って呼び方やめて欲しいなぁ…」
「えっ?」
「今はプライベートだし、友人ですから近しい呼び方をしてもらう方が嬉しいです」

確かに、「先生」呼びだと仕事の延長ぽくなる…

「…柳川さん」
「ありがとうございます。それじゃあ行きましょうか」

「さん」付けで呼ぶと、少しだけ2人の距離が縮まったような気がする…




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