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恍惚なる治療[改訂版]
第8章 沼に溺れる
まさか外で勃起するなんて…
何もされてないのに、感触を思い出しただけでこんなに…
ふしだらな男だと思われただろう…
「佐伯さん、顔を上げて」
「………」
俯いて首を横に振った。
きっと軽蔑した眼差しで俺を見ているに違いない、彼の顔を見られるはずがない…
すると、頭上から小さな溜め息が聞こえ、目の前に柳川さんが羽織っていたジャケットが差し出された。
「コレで前を隠して少し待っていて下さい」
そう言い残し、柳川さんは雑踏の中に消えていった。
姿が見えなくなると、途端に胸が苦しくなってきた。
あれだけセックスを拒否するような言動を繰り返していた俺がこんな状態で、あの人も呆れたのか…
「はっ、はぁ…」
俺を1人残して行かないで欲しい…
惨めな気持ちを抱えたまま、1人になりたくない…
「はぁはぁ、佐伯さんお待たせしました…」
どれくらい俯いていたのか、気が付くと息を切らした柳川さんが戻ってきており、手にはマスクと帽子が握られていた。
見上げると、柳川さんの顔は慈愛に満ちた、決して俺を軽蔑してる表情では無かった…
マスクと帽子を着けられると、立ち上がるよう促され、ジャケットで前を押さえながら立ち上がった。