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恍惚なる治療[改訂版]
第9章 都合のいい存在

「佐伯先生、終わりましたよ」
「ありがとう、お疲れ様」

仕事部屋に三雲さんが入ってくると、目の前にコーヒーカップを置いてくれた。
コーヒーの香りを楽しんでいると、三雲さんが隣の椅子に座った。

「………」

普通の感覚を持つ男性なら、健気に仕事に来てくれる彼女を恋愛対象として見る事が出来るんだろうな…
三雲さんは可愛い、だけどそれ以上の感覚が持てない…
彼女を女性として見れば、また発作を起こしてしまう…
俺は発作があるから、女性とセックスしたり、愛したり出来ない…

「…どうしました?ジッと見て…」
「ごめん…それよりどうしたの?」
「佐伯先生、何か悩んでますよね?最近顔色悪いですよ?2カ月前までの先生みたい…」
「そうだね、最近疲れてるのかも」

無理に笑顔を作ると、三雲さんの表情は暗くなり、今にも泣きそうな状態に…

「えっと…」
「最近の佐伯先生、暗くて嫌です」
「えっ!?」
「この前までは明るくなって、出掛けるのを楽しみにして笑顔になる佐伯先生が眩しくて素敵でした。でも今は外の空模様みたいに暗く淀んで、今にも消えそうな先生を見てたら、私まで悲しくなります…」




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