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恍惚なる治療[改訂版]
第9章 都合のいい存在

先程までの気迫はすっかり萎み、柳川さんの表情は曇っていた。
頬に伝う雨水が涙のように見えて、胸が突き刺されたように傷んだ…

「あなたとの恋愛は上手くいきそうで上手くいかない…あと少しのところで掴目そうになっても、あなたが僕の手からいつもすり抜けてしまう…さっきの言葉、結構傷付いたんですよ。あなたに夢中なのに、あなたは女性と幸せになれなんて言うから…」
「……」

柳川さんが傷付くのが分かった上で言ったあの言葉…俺は試したいと思ったのかもしれない…
何も言えず俯いていると、顎を持ち上げられ、柳川さんと目を合わせられる。

「佐伯さんは僕の事が嫌いですか?」
「…嫌いじゃない…」
「嫌いじゃないなら、僕と寝てくれませんか?あなたが僕を好きになるまで我慢すると約束してたけど、もう、これ以上我慢出来ない…」

手を握られ、見つめられて柳川さんの顔が近付く…
ダメだ、この人は本当の幸せの為に身を引かないと…

ー僕の幸せは僕が決めますー

キスをされながら、その言葉を頭の中で反芻する…
もう、俺も疲れた…
俺は…




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