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恍惚なる治療[改訂版]
第11章 晩夏の甘い思い出
そして迎えた祭り当日の夜。
俺は電車に乗って、目的の駅に向かう。
夜だから人も少ないので、電車では特に気分が悪くならずに乗れた。
駅前で待ち合わせている柳川さんの元に向かうと、入り口で彼は待ってくれていた。
「すみません、お待たせしてしまって」
「いえ、僕も今来たところ…」
柳川さんは俺の姿を見るや否や無言で固まってしまった…
「………」
これは似合ってなかったかな…
久しぶりの祭りという事で、俺はクローゼットから以前購入した浴衣を着て来ていた。
気合を入れ過ぎたか…
柳川さんは普通に洋服だから、それに合わせた方が良かったか…
「あの、柳川さん…」
「あっ、すみません…余りにカッコ良くて見惚れてました…」
「えっ…」
我に帰った柳川さんは頰を染めながら俺の傍に寄って来た。
「凄く似合ってます。灰色の浴衣に藍色の帯というシンプルなデザインですが、それが佐伯さんの洗練されたカッコ良さをより引き立たせていて。合わせ目からチラッと見える胸元もセクシーで、眼福です」
「ど、どうも…柳川さんもその格好カッコ良いですよ…」
そこまで褒められるとは思ってなかったので、照れながら柳川さんの服装を褒める。
お互い褒め合ったところで平常心になり、笑い合いながら歩き始めた。