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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷

柳川さんにタオルで顔を優しく拭かれる。
柳川さんはこの涙を見て、何か思ったのだろうか…

「柳川さん、俺……」

言いかけると、柳川さんに頭を撫でられる。

「今は何も言わないで…検査が終わったらゆっくり休んで下さい」
「はい…」

しばらくすると、柳川さんと男性の看護師に付き添われ右手と頭の検査を行った。
男性が来たのは柳川さんの配慮だろう、有り難い…

右手は転んだ際に手を地面に突いてしまい、体重と衝撃が掛かり、手首と手が折れていたようで、全治1ヶ月と診断された。
頭の方は明日詳しい検査結果が出るとの事で、検査を終えて病室に戻った。

柳川さんが病室から出て行き、カーテンで仕切られた中、1人孤独に押し潰される…

「はぁ…」

不安定な状態で1人になりたくない…
柳川さんに居て欲しかったが、あの人も仕事が終わるからいつまでも居てもらうわけにもいかない…

「消灯のお時間です。皆さんお休みなさい」

看護師が声を掛けると、部屋の中が暗闇に包まれる…

「……っ!」

怖い…
途端に緊張感に襲われ、息が荒くなる…
暗いのは嫌だ…
どこから人が来るか分からない、何も対処出来ない…

「佐伯さん」
「ひっ!!」
「…大丈夫ですか?」
「や、柳川さん…」



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