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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
いきなりカーテンが開いた瞬間、俺は悲鳴を上げてしまった。
その人が柳川さんだと気付くと、一気に力が抜けた。
「すみません…」
「いえ、もう消灯の時間なので大声は出さない方が」
「はい…」
よく見ると、帰宅時間にも関わらず、まだ柳川さんは白衣を着ている。
「柳川さん、もう帰る時間なんじゃ…」
「そうなんですが、佐伯さんが心配で…」
「……」
心配して傍に居てくれるのが純粋に嬉しい…
不安定な状態だから、柳川さんの優しさが滲みる…
「眠れないんですか?」
「……俺、暗い中眠れないんです。周りが見えるくらいの明かりがないと怖くて…」
流石に大人なのに暗いのが怖いなんて言って呆れられるかな…
「大人になっても、暗いのが怖い人は居ます。それを恥ずかしがる事はありません」
「……」
柳川さんは呆れたりしないか…
だけど…暗闇が怖い原因を知ったら、どんな反応をするのか…
「………」
「どうされました?」
「いえ、何でも…」
「佐伯さんの方が先に寝ちゃうから、暗闇が怖いなんて知らなかったなぁ」
「今はその話はやめて下さいよ。誰が聞いてたらどうするんですか…」