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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
柳川さんは何か言ったかと首を傾げているが、特に指摘はしなかった。
「今からする事は皆には内緒ですよ…」
「えっ…」
何をするのかと思いきや、いきなり布団を持ち上げ、布団の中に柳川さんが入ってきた。
狭いベッドで、柳川さんに抱かれる格好となり、柳川さんの匂いと温もりに包まれる…
「や、柳川さん…」
「佐伯さんが眠ったら、僕も帰ります」
暗闇で誰かと一緒に居ると落ち着かなくなって、怖くなるのに、柳川さんだと安心する…
「そう言えば、付き添いの方は帰られましたよ」
「田宮さんですね、俺の担当です。彼には迷惑掛けちゃったな…」
右手を骨折してしまい、この状態では仕事もままならないだろうから、田宮さんと話さないと…
「仕事どうしようかな…」
「仕事も大事ですが、怪我を治すのが先ですよ。佐伯さん無理されるから…」
「はは、そうですね…」
柳川さんの腕の中で少しずつ微睡み始めた。
暗闇の中で眠れるのは初めてだ…
このまま居てくれたら良いのに…
「おやすみ、佐伯さん…」