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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
翌日、頭の方も何の異常も見られなかったので、退院する事に。
田宮さんが迎えに来てくれて、車で家まで送ってもらう。
「田宮さん、昨夜はすみませんでした。ご迷惑をお掛けして…」
「いえ…大丈夫、とは言えなさそうですね…」
「はい…」
「今月の原稿は既にいただいてますが、来月は休載という形を取るのは如何でしょうか?無理をすると骨折の治りも遅れると思うので…」
「そうですね…」
今の精神状態で作品を描けるかと言われれば、答えはノーだ。
グシャグシャな感情のまま作品に向き合えるわけがない…
1ヶ月時間があるから、少しでも気持ちに整理をつけたい…
「佐伯先生どうされました?」
「いえ、そう言えば昨日の女性はどうなりました?」
「救急車を待っている間に彼女は帰しました。『急に倒れたのは自分が迷惑を掛けたせいではないか』と心配されてましたが…」
「そんな事ないですよ。ただ、酔っ払って転んだだけです…」
「酔っ払ってたんですか?そんな素振り一切見せなかったのに…」
田宮さんの追及にこれ以上何も言わずに口を閉ざした。
家に到着すると、田宮さんにお礼を告げてようやく我が家に帰宅した。
「ただいま、とら丸。いつも帰ってこなくてごめんな」
「みぃ…」
「いつもと違うか?しばらく不便になるな…」