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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
昼間、片手で何とかインスタントラーメンを調理していると、柳川さんから電話が掛かってきた。
『佐伯さん、あれから体調の方は如何ですか?』
「落ち着いてます。痛みも処方された鎮痛薬を飲んだので、幾分マシになりました」
『そうですか。あのですね、佐伯さん…』
「はい?」
『右手が治るまでの間、佐伯さんのお世話をさせてもらえませんか?』
「え?」
世話をしてもらえるなんて有り難い話だけど、医師として忙しい身である柳川さんの時間を奪ってもいいのだろうか…
「それは…」
『1人暮らしだと、右手が使えないと色々不便でしょう。僕は佐伯さんのお世話をするのは全く苦ではないので、是非させて下さい』
お願いされてしまった…
「俺の為に時間を割いても良いんですか?」
『もちろん。佐伯さんと居られる時間も増えますし、恋人の役に立ちたいと思ってるんですよ』
「恋人…」
こういう時は意地張らずに甘えて良いのかな…
「…すみません、お世話になります」
『ありがとうございます。よろしくお願いします』
「こちらこそ、よろしくお願いします」