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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷

そして、その日の夜、早速大きめの鞄を持って柳川さんが我が家にやって来た。


「すみません、遅くなってしまって…」
「いえ、わざわざ来てもらってありがとうございます」
「お邪魔します。晩ご飯は食べましたか?」
「はい。シャワー浴びたいんですけど、ギプスにビニール袋を被せてもらってもいいですか?」
「はい、任せて下さい」

片手で服を脱ぐのも一苦労する。
柳川さんに手伝ってもらい、何とか全て脱ぐと、右手をビニール袋で覆ってもらった。

シャワーを浴びている最中、そういえばと考えた。
今日柳川さん浴室に入って来ないな…
俺が怪我してるから、遠慮してるのか…

「……いや、何期待してるんだ…」

期待する心の中に、何故か黒い渦のようなものが湧き上がってきた。
それは不安と恐怖を孕んだもので、かつて味わった苦いもの…

「…はぁ」

俺はもう大丈夫…
柳川さんのお陰で少し改善したんだ…

そう自分に言い聞かせて浴室から出た。



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