この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
用意してくれたパジャマに着替えて居間に向かうと、ソファに柳川さんがちょこんと座っていた。
俺の顔を見るとニコリと笑い掛けて、腕のビニールを取ってくれた。
「髪の毛乾かしてあげますね」
「はい」
洗面所から持ってきたドライヤーで髪の毛を乾かしてくれる。
柳川さんの指が髪の毛を掻いて、なびいていく。
「……」
どうしてだろう、いつもと違う…
耳を触られたら、身体が反応してしまうのに…
「終わりましたよ」
「ありがとうございます」
横からニュッと柳川さんの顔が飛び出してきて、キスをしようと顔が近付いてきた瞬間…
『孝志くん…』
ドクン…
「あっ…」
バッ…
「えっ」
過去の記憶がフラッシュバックしてしまい、思わず顔を背けてしまった…
「はぁ、はぁ…」
どうして、今になって出てくるんだ…
嫌な汗が止まらない…気持ち悪い…
柳川さんは違うのに…
「佐伯さん…」
「うう…」
「さ、佐伯さん、どうされたんですか!?」
「ううー、ごめんなさい、ごめん…」
動揺する柳川さんを前にしても、涙が止まらない…
俺はいつまで過去の呪縛に囚われないといけないんだ…