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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷

用意してくれたパジャマに着替えて居間に向かうと、ソファに柳川さんがちょこんと座っていた。
俺の顔を見るとニコリと笑い掛けて、腕のビニールを取ってくれた。

「髪の毛乾かしてあげますね」
「はい」

洗面所から持ってきたドライヤーで髪の毛を乾かしてくれる。
柳川さんの指が髪の毛を掻いて、なびいていく。

「……」

どうしてだろう、いつもと違う…
耳を触られたら、身体が反応してしまうのに…

「終わりましたよ」
「ありがとうございます」

横からニュッと柳川さんの顔が飛び出してきて、キスをしようと顔が近付いてきた瞬間…

『孝志くん…』

ドクン…

「あっ…」

バッ…

「えっ」

過去の記憶がフラッシュバックしてしまい、思わず顔を背けてしまった…

「はぁ、はぁ…」

どうして、今になって出てくるんだ…
嫌な汗が止まらない…気持ち悪い…

柳川さんは違うのに…

「佐伯さん…」

「うう…」
「さ、佐伯さん、どうされたんですか!?」
「ううー、ごめんなさい、ごめん…」

動揺する柳川さんを前にしても、涙が止まらない…
俺はいつまで過去の呪縛に囚われないといけないんだ…



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