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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
「はい、ホットミルクです。落ち着きましたか?」
「はい…すみません、変なところ見せちゃって…」
「いえ」
ようやく涙が収まると、柳川さんが隣に座って頭を撫でてくれる。
鼻を啜りながら牛乳を飲み、俺は口を開いた。
「急に泣き出してすみません…あと…キスを拒否してしまって…」
「いえ、気にしてませんよ。アレは僕が悪いですよ、キスしたくない、気分の乗らない日もありますからね」
「違います、アレは…」
喉の辺りに詰まりそうになる言葉を無理矢理絞り出そうとすると、胸が苦しくなってくる…
「本当は…俺は…」
「佐伯さん…」
「はぁ、昔の事を思い出して…おれ、俺は…女の人に……」
「それ以上言わなくていい…」
過呼吸になりそうになったところで柳川さんに抱き締められ、背中を優しく撫でられた。
撫でられる事で気分が落ち着いてきて、呼吸も整ってきた。
「苦しくなるなら無理に言わなくてもいいんですよ」
「でも…」
「昨夜から精神状態が不安定なのに、今昔のトラウマを話したら、状態がより悪くなってしまう。話すのは落ち着いてからでいいですよ」
今話すチャンスを潰されたら俺はずっと言えないかもしれないのに…
その一方で、柳川さんに無理に話さなくても良いと告げられた事で気持ちが軽くなった部分もある。
「大丈夫。僕はいつでも佐伯さんの味方ですから…」