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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷

「どうして、そこまで俺の事を信じてられるんですか?」
「好きだから」
「そんな気持ちだけで信じられるわけないですよ」
「…もう1つ理由があるとすれば、医師として佐伯さんをしっかり治してあげたいと思うからかな?」
「治す…」

「僕はただの内科医だけど、1人の医師として患者さんと向き合って、患者さんが日常を送れるようにしてあげたいんです。佐伯さんの事は近くで女性に対する恐怖心を見ているから尚更治してあげたい。だけど原因を無理に聞き出せば患者さんは苦しくなる。苦しめるだけなら治療の意味が無い。だから今は無理に言わなくてもいいんですよ…僕は患者さんを決して見捨てません…ゆっくりと進んでいきましょう」

柳川さんの言葉1つ1つが心に染み渡る…
泣きそうになって俯くと、柳川さんの手が重なる。

「手を触るのは嫌?」
「嫌じゃない」
「ハグするのは怖くないですか?」
「はい…」
「今日はここまでにしておきますね」

俺が怖がらないよう1つ1つ確認して触れてくれる…
柳川さんの心遣いに胸が熱くなる…

「あなたに甘えてばかりだ…もっとしっかりしないとな…」
「いいんですよ甘えてくれても。僕達は恋人なんですから」


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