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恍惚なる治療[改訂版]
第15章 身体を重ねる
「…これで以上です。面白くも無い話を聞いてもらってすみませんでした」
「………」
柳川さんは無言のまま真っ直ぐ俺を見据える。
その目には不安に染まる俺の姿が映る…
「……」
何か言ってくれ…
「そんなつまらない事でイジイジと悩んで」って言ってくれても構わないから…
「佐伯さん」
「はい」
「抱き締めてもいいですか?」
「はい…えっ?」
すぐに柳川さんの腕が伸びてきて、柳川さんに抱き寄せられた。
柔らかい毛布に包まれるような優しい抱擁に俺は戸惑う…
「あの…」
「すみません、あなたに掛ける言葉が見つからなくて…安易な慰めの言葉なんて言えないくらい佐伯さんが体験された行為が酷くて…その家庭教師の女性に腹が立って仕方ない…」
「……」
不意に抱き締められる力が増して、柳川さんの怒りが伝わってくる。
俺の為に怒ってる…?
「誰にも言えず、1人でずっと抱え込んでいたんですね…もっと早く気付いて、僕もその荷物を抱え込んであげたかった…遅くなってしまって申し訳ない…」
「……っ」