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恍惚なる治療[改訂版]
第5章 彼の素顔
「ところで、佐伯さんはうちの子との将来はきちんと考えて下さってます?」
「ぶっ!?」
海外生活の話が終わると、いきなり三雲さんのお母さんから話を振られ、酒を吹き出しそうになった。
「こら文乃、佐伯さんが困ってるだろ!?」
「だって…」
「いや…僕達は付き合い始めて日も浅いですし、まだお互いの事を全部知ってるわけでは無いので、将来の話については…」
付き合っても無いのに、将来の話なんて出されても答えられるわけも無い…
濁して答えていると「もう!」と痺れを切らしたお母さんにマシンガンのように捲し立てられる…
「私ね、佐伯さんの事ひと目見て気に入ったの。あなたなら穂波を幸せにしてくれるって。見るからにあなたは優しそうで、人を傷付ける事はしない。この子を大切にしてくれる…私はあなたからそう感じ取ったのよ。穂波を幸せにしたいと願ってくれるなら、ここで結婚の意思を示して欲しいの」
結婚の意思!?
話が飛躍し過ぎて困惑している俺に、テーブルに手を付いて身を乗り出して来そうになったお母さんをお父さんが止めた。
「結婚の意思が無いなら、この子にお見合いさせるわ。早く結婚してこの子を幸せにさせてあげたいのよ…」
「こら、いい加減にしなさい…穂波が心配だからと言って、相手に無理矢理結婚を迫るんじゃない。佐伯さんも困ってるだろ…佐伯さん申し訳ない。少し穂波と席を外してくれませんか?」