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恍惚なる治療[改訂版]
第5章 彼の素顔

退室すると俺は、すぐにトイレに向かい手を洗った。
手洗いをしていると、胃の中に湧き上がっていた不快感は薄らいでいった。

三雲さんのお母さんは意外だったな…
おしとやかな花のような人だと思っていたが、あんな激しい一面があったとは…
接近されてあのまま言葉で押されていたら、発作を起こして吐いて倒れるところだったかもしれない…

トイレから出ると三雲さんが待っており、俺の顔を見て駆け寄ってきた。

「佐伯先生大丈夫ですか?顔色良くないみたいですけど…」
「大丈夫、ちょっと飲み過ぎただけ…」

発作が出そうになったとは口に出さず、彼女を安心させる。
壁に寄り掛かると、三雲さんは近付いてきて同じく壁にもたれ掛かった。

「母がすみません…いつもは激しく無いんですけど、結婚話が出ると、相手を見定めるようにあんな感じに突っ走って…」
「平気だよ。それだけ三雲さんを心配してくれてるんだね…」
「本人の価値を押し付けられても迷惑なんですけどね…」




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