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恍惚なる治療[改訂版]
第5章 彼の素顔
結婚に関しては過剰だが、心配してもらえるのは羨ましい限りだ…
三雲さんはなにやら言いにくそうにモゴモゴと口を動かして、小さな声を発した。
「実は母は結婚するのが遅かったみたいで、私を産んだのが30代を超えてからなんです。そのせいでお婆ちゃんからずっと嫌味を言われてて…父が祖母をいつも注意していたんですけど、母にとってそれが残ってるみたいで、私には早く結婚して欲しいんだと思うんです。それは私も分かるんですけど…私まだまだ仕事や趣味をもっと楽しみたいんです。それに…いつか恋愛してずっと一緒に居たいって思える人と結婚したいんです。だから…」
23歳で結婚となると、仕事や趣味を思うように楽しめなくなるだろう…
「その気持ちをお母さんに伝えてみたらどうかな?三雲さんの正直な気持ちを聞いたらお母さんも分かってくれると思うよ。あの調子で無理そうでもお父さんなら理解してくれるんじゃないかな?」
「佐伯先生…私ずっと母と結婚の話をするのが怖かったんですけど、今日勇気を出して話してみようと思います」
「俺も隣に居るから頑張って。今は恋人なんだから」
個室に戻ると、お母さんは落ち着いたのか縮こまっており、俺達に向かって申し訳なさそうに深々と頭を下げた。