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恍惚なる治療[改訂版]
第5章 彼の素顔

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「佐伯さん、今日は本当にありがとうございました!」
「いえ、こちらこそ…」
「また帰国する事があったら、お会いしましょうね」

2時間後、食事を終えてタクシーに乗る三雲さん一家を見送る際、タクシーに乗る前に三雲さんから謝られた。

「佐伯先生、今日はすみませんでした。お詫びはまた後日…」
「お詫びなんて大丈夫だよ。これから家族水入らずの時間を楽しんできてね」
「はい、ありがとうございました」

タクシーが見えなくなると、ようやく緊張の糸が切れ、その場にへたり込んだ。

「あ〜…やっと終わった」

あの後何を話したか覚えていない…
酒だけ飲んでたから、空きっ腹にアルコールが回って、妙に酔ってしまった…

近くでラーメンでも食べていこうかと迷っていると、背後から聞き慣れた声が…

「アレ?佐伯さん?」
「え、柳川先生…?」
「佐伯さんだ〜。偶然だな〜、こんなところで会えるなんて」

覚束ない足取りで俺の傍に来ると、肩を抱いてきた。
かなり飲んだのか顔を真っ赤にして酒臭い…




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