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恍惚なる治療[改訂版]
第2章 最初の治療
2年前から俺の担当となった人だが…
歳下の割に率直に物を言うタイプで、ダメ出しを多くもらうが、作品をより面白く、多くの読者に読んでもらいたいという彼の気持ちがあるがゆえ。
俺もそれを分かっているので、田宮さんのダメ出しをしっかりと受け止めている。
「酷い顔ですね。疲れ切ってて今にも倒れそうだ…」
ロビーで向かい合って座り、田宮さんは原稿に視線を落としたまま話してきた。
「はは、そうですね…早くから満員電車に乗ったからですかね?」
「それは申し訳ないです。10時から大事な用事が入ってしまったので、今の時間しか空いてなかったので」
「田宮さんのご都合もありますから、仕方ないですよ」
「すみません、でも顔のやつれ具合から見ると、疲れてる原因はそれだけじゃ無いでしょ?」
「…っ」
虚を突かれて一瞬口籠ってしまったが、乾いた口からやっと言葉を絞り出した。
「…夏バテです」
「…6月になったばかりですよ。もう夏バテですか?」
「そうです。室内ジメジメして暑いんで、食欲が湧かなくて…」
「それ程酷いなら病院に行って、点滴打ってもらった方が良いんじゃないですか?もし倒れられると、原稿が遅れたらこちらも困りますから」