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透明な炎
第4章 ほ
江の島水族館のクラゲはものすごくきれいに浮遊していて
見ているだけでゆらゆらしてくる。
「キレイ」
「あぁ」
手と手がくっつきそうなほど近くによって
まっすぐに立っているはずなのに気持ちが武藤の方に傾く。
真っ青にライティングされている大きな水槽の前に立って
自分自身も海の中にいるようで
冷たい空調が海の中にいるような錯覚を起こす。
「あぁ、溶け込みたい」
「俺も」
明日になれば日常が帰って来て
こんなにゆったりする時間もなくて
日本語を話す量と同じぐらい英語を話して
目の前のメールの内容だけがこの世のすべてのように格闘して
そして疲れて
帰りに少しだけ飲んで、愚痴を言って笑って
泥のように眠る。
こんなフワフワした時間なんかなくて
身体も心も全て溶けるような感覚に全てをゆだねたくなる。
そっと繋がれたその手の感覚にビックリして
武藤の顔をビクッとしてみれば
視線は水槽に向いたままで
繋いでいないもう片方の手をそっと自分の口に持って行って
「しぃ」
と私を黙らせる。
手ぐらいでじたばたするのも
この年になって恥ずかしくて
何よりその手の感覚が心地よくて
私は一瞬武藤が既婚者なことを忘れる事にした。
見ているだけでゆらゆらしてくる。
「キレイ」
「あぁ」
手と手がくっつきそうなほど近くによって
まっすぐに立っているはずなのに気持ちが武藤の方に傾く。
真っ青にライティングされている大きな水槽の前に立って
自分自身も海の中にいるようで
冷たい空調が海の中にいるような錯覚を起こす。
「あぁ、溶け込みたい」
「俺も」
明日になれば日常が帰って来て
こんなにゆったりする時間もなくて
日本語を話す量と同じぐらい英語を話して
目の前のメールの内容だけがこの世のすべてのように格闘して
そして疲れて
帰りに少しだけ飲んで、愚痴を言って笑って
泥のように眠る。
こんなフワフワした時間なんかなくて
身体も心も全て溶けるような感覚に全てをゆだねたくなる。
そっと繋がれたその手の感覚にビックリして
武藤の顔をビクッとしてみれば
視線は水槽に向いたままで
繋いでいないもう片方の手をそっと自分の口に持って行って
「しぃ」
と私を黙らせる。
手ぐらいでじたばたするのも
この年になって恥ずかしくて
何よりその手の感覚が心地よくて
私は一瞬武藤が既婚者なことを忘れる事にした。