この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
嘘の数だけ素顔のままで
第5章 去勢【4】
「何なんですか?」

 オオハナタカコが傍に近づいてきて、コトブキはそれとなく腰を引いた。コトブキはトイレとオオハナタカコを交互に見た。


「え、何なの?」

 勘の悪いオオハナタカコがまた余計なことを喋りだしそうになってコトブキは再びシーッというジェスチャーをした。


「誰か……いるの?」

 オオハナタカコは、ヒタチノゾミの机を指差してコトブキに目配せした。コトブキはうなずいた。オオハナタカコがドアに耳をそばだてた。すると、トイレから衣擦れが再び聞こえだした。


「え……何してるの」とオオハナタカコは声にださずにそう言った。

 コトブキの腕を摑んでさらに耳をそばだてた。ふいにオオハナタカコの香りがコトブキの鼻先をくすぐった。コトブキの全神経が一気に下腹部に集まってしまった。


 ドア越しに男と女のもつれあう吐息が聞こえた。物がぶつかる音がした。コトブキとオオハナタカコは互いの顔を見合わせた。コトブキがうなずく。オオハナタカコは口を両手で覆った。


 オオハナタカコに状況がわかって貰えた途端、コトブキは目のやり場に困った。脅迫行為的に何か喋らなきゃと迫られたけれど唇が動かなかった。そもそもさんざんオオハナタカコに喋るなというジェスチャーを出しておいて今さら自分から話し掛けるのは違うな、と思い直した。

 場しのぎのつもりでコトブキは微笑んでみたが、顔の所々に皺が寄っただけで気持悪い笑顔だったかもしれない。


 オオハナタカコはコトブキが微笑んだことさえ気がつかず、固まったままの姿勢でずっとドアを見つめ続けていた。


/99ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ