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嘘の数だけ素顔のままで
第5章 去勢【4】
「相手の男って……『先生』だよね」
オオハナタカコにそう言われて、コトブキは焦った。オオハナタカコはコトブキの存在を忘れていた訳ではなかった。
そうだと思います、コトブキはそう言ったつもりだったが、ほとんど声になっていなかった。
「熱くない?」とオオハナタカコは言った。
コトブキがオオハナタカコの方を見ると、ドアを見つめたままうわ言のように、熱くない? と三回口にした。
確かに教室はどこか埃っぽくて蒸し暑かった。オオハナタカコにそう言われるまでエアコンの音がしていないことにさえ気がつかなかった。
「熱くない?」とオオハナタカコがまた口にした。
コトブキは、この状況でエアコンなんてつけられる訳がないだろう、と思いつつもわざとらしくリモコンを探す振りをした。そうしなければならないような気がしたし、何よりそうでもしなければこの場がもたなかった。
オオハナタカコは、熱い……熱いと不規則に何度も口にした。コトブキはリモコンを探す仕草のまま固まった。息さえ止めていたように思う。そう言えば……ヒタチノゾミも熱い、熱いと声をひきずっていたのを思い出したのだった。
コトブキは、オオハナタカコをもう一度見た。
オオハナタカコにそう言われて、コトブキは焦った。オオハナタカコはコトブキの存在を忘れていた訳ではなかった。
そうだと思います、コトブキはそう言ったつもりだったが、ほとんど声になっていなかった。
「熱くない?」とオオハナタカコは言った。
コトブキがオオハナタカコの方を見ると、ドアを見つめたままうわ言のように、熱くない? と三回口にした。
確かに教室はどこか埃っぽくて蒸し暑かった。オオハナタカコにそう言われるまでエアコンの音がしていないことにさえ気がつかなかった。
「熱くない?」とオオハナタカコがまた口にした。
コトブキは、この状況でエアコンなんてつけられる訳がないだろう、と思いつつもわざとらしくリモコンを探す振りをした。そうしなければならないような気がしたし、何よりそうでもしなければこの場がもたなかった。
オオハナタカコは、熱い……熱いと不規則に何度も口にした。コトブキはリモコンを探す仕草のまま固まった。息さえ止めていたように思う。そう言えば……ヒタチノゾミも熱い、熱いと声をひきずっていたのを思い出したのだった。
コトブキは、オオハナタカコをもう一度見た。