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マスタード
第9章 愛ふたたび・・
どうして推しさんを愛するみたいにプラトニックに愛せないのか自分を責めながらも裸になって布団に入ろうとするとメールが着信した。

愛美からだった。

ダメ、我慢できない。
逢いたい。

愛美も同じ想いだったのだ。
奏はすぐに返事をして夜中の街に愛美を迎えに駆けていった。

こんな深夜だから人目に付くことはないのだろうけど、愛美は帽子とメガネで変装していた。変装していても一目で愛美だと解った。
そういえば推しさんも街中のイベントとかでオタバレ防止のために変装していても一目で『モルツ』だと解ってくれるのが嬉しいと思い出した。

「来てくれてありがとう」
「当たり前だろっ。僕だって愛美に逢いたかった」

キスをすると奏は人目に付かないように愛美を旅館に招き入れた。本当は部屋に人を入れてはいけないのだが、こんな夜中に誰に見つかることもない。

とりあえずビールで乾杯した。

「陽葵は?」

「大丈夫よ、もうお姉さんだからひとりで寝れるから。奏ちゃんパパに逢ってきていいよって言ってくれたの」

それで奏にメールをして見つからないように抜け出してきた経緯を簡単に説明した。


「そうか、陽葵も大きくなったんだ」と奏が娘の成長に感慨していると、

「まさか陽葵のことを女として見てるんじゃないでしょうね」と愛美が妬きながら言った。

「まさか、僕にとってはいつまでも可愛い娘だよ」と奏は優しく言った。

「秀ちゃんには内緒にしてるんだけど、陽葵も奏ちゃんのことをパパだと思い続けているよ」と愛美は嬉しそうに言った。

「いいお部屋ね。旅館で働いてはいるけど泊まったことはないから羨ましいな」と愛美は珍しそうに部屋を見渡した。

温泉旅館だから和風情緒たっぷりだし、この旅館は部屋にも温泉があるのが嬉しいところだ。

「入ってもいいよ」

愛美が部屋の温泉を興味津々に見ているので勧めてあげると、「一緒に入ろう」と愛美は顔を赤らめた。

久しぶりに見る愛美の裸は美しく、前よりも妖艶さを増していた。秀一とはこちらの生活も充実してるのかと思うとちょっと腹立たしいような哀しいような気持ちになってきた。

温泉に浸かるとどちらからともなく一糸纏わない裸のまま抱き合って激しいキスをした。

「一段とキレイになった、愛されているんだね」

奏は全ての感情を押し殺して愛美の美しさに感動した。
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