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マスタード
第1章 はじめての単身赴任
最愛の愛犬ジョリーとの触れ合いは奏にとって最大の癒しである。
半年前に前の犬が亡くなり、寂しくてすぐに里親募集を探してもらってきた犬だ。もらってきたその日からまるでずっと住んでいる我が家のようにくつろいだジョリーの姿は忘れることができない。

ジョリーと離れるのは単身赴任をしたくない大きな理由のひとつだった。

ひとり息子の星志と一緒にジョリーの散歩に出る。
「寂しくなるなぁ」と星志はポツリと言った。
「月に一度や二度は帰ってくるさ」と奏は応えた。

星志は来年には高校受験を控えている。今まで単身赴任を拒んできたのは星志が高校生になるまではと考えていたことも大きい。
義務教育でない高校生ともなれば一人前だから親が傍にいなくても大丈夫だろうというのが奏の考えだった。自分もそうやって生きてきた。

高校生になるまでという思いよりは少し早い単身赴任となった。

単身赴任というのは出世していくためのひとつの試練でもあり、優秀な教師には早いうちから話がくる。
奏にも話がなかったワケではない。妻と離れたい気持ちはあったが、星志が小さいことを理由に断り続けてきた。

奏ももう四十を過ぎた。出世が早い同期や後輩は家庭を犠牲にしてでも単身赴任を繰り返して出世してやがては教頭になったり、教育委員会の偉い人になったりしてうまくいけば校長にもなれるだろう。

妻との関係は最悪だが、子供や犬とは仲がよかったので、この家庭を失いたくはなかった。家族との折り合いがよくない家庭で育ってきたから、どこかで家庭に飢えていたのかも知れない。

家庭を優先して単身赴任も拒み続けて四十を過ぎた。
もう出世の芽はないと諦めていたのだが、突然の単身赴任の打診がきた。しかも弱体化した吹奏楽部を立て直すことが使命だ。

相当評価されているし、期待もされていることがうかがえる。単身赴任を受け入れたとしても出世はできないかも知れない。しかし、自分が評価されたのは嬉しいし、そういう人事に動いてくれた人がいるのも嬉しいからそれに応えたいと思った。

これが単身赴任を受け入れた最大の理由である。
だから、妻と離れられるのは嬉しいが、星志やジョリーには犠牲にしてしまった申し訳なさもある。

「ごめんな。2年だし、なるべく帰ってくるようにするからな」と奏はジョリーの頭を撫でてあげる。


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