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マスタード
第1章 はじめての単身赴任
もうすぐ離れ離れになるのを知ってか知らずかジョリーは嬉しそうに尻尾を振った。

こうして奏が単身赴任をする日がやってきた。
そんなに荷物は要らないが、布団、扇風機、テレビとビデオ、衣類といった最小限のものは運ぶことにした。
所詮は教員の給料で妻はパートなので、そんなに裕福なワケではないので車は1台を保有している。

転勤先が海と山に囲まれた田舎であることや、月に一度や二度は帰ることを考えると車は持って行きたいところだが、車を持って行かれたら困ると妻は頑として譲らない。

仕方ないので、レンタカーを現地の営業所返しで借りて荷物を積んで引っ越すことにした。
思わずなんてこったと言いたくなるが、その日は悪天候でどしゃ降りの雨の中険しい山道を運転していく羽目になった。

そんなに裕福ではないので滞在は勿論宿舎を借りた。
これまたなんてこったと言いたくなるが、宿舎は街から離れた山の上の所しか空きがなかった。
バスも本数がないので街まで行くには自転車か歩きしかない。街まで歩くと30分か40分ぐらいの所だ。

幸いにも宿舎に着くと雨は上がった。
手早く荷物を降ろすと駅前にある営業所にレンタカーを返却した。

さて、とりあえず今日からでも要る生活必需品を調達しなければならない。
冷蔵庫と洗濯機と自転車だ。街中のリサイクル店まで行って安いのを探して、3つ買うからと交渉して全部で1万円で済ませた。
しかもお願いして店のトラックを出してもらって宿舎まで運ぶのもサービスしてもらった。

こうして奏の単身赴任生活は始まった。
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