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マスタード
第2章 想い出の店
この24時間のスーパーはリサと待ち合わせたり『愛』へ行く前にビールテイストを買ったりと、リサとの思い出の場所でもある。
まさか、そんな店を日常的に利用することになるとはと思うと少し不思議な気分である。

しかし、その朝は二日酔いだったので、温かいかけそばかうどんであっさりと済ませたい気分だった。
スーパーは弁当は半額になったものも残っていることもあるが、めん類は朝には殆どないことが多い。

駅の立食いそばは、早くから通勤する人はターゲットにしていないのか開店が遅い。

だからコンビニでそばを食べることにした。10年前は駅前にコンビニなんてなかったのに随分と便利になったものだと思う。

駅前のコンビニはイートイン(食べるとこ)がないので、少し離れたコンビニに行ってみよう。イートインがなければ駅まで来て待合室で食べればいいさと思って行ってみたらイートインがあった。

ありがたいと、天ぷらそばを買って温めてもらう。イートインに行くと何やらアニメのチラシが置いてある。この街を舞台にしたアニメがあって、そのオフ会のチラシのようだ。
何となく興味を持ってチラシをもらって、天ぷらそばを食べ始める。

天ぷらそばを食べながら、窓ガラスから外を眺めると、懐かしい店が見えた。懐かしいといっても夜営業してる姿しか見たことないから、こんな明るい朝の姿を見るのは初めてのことだった。

でも、間違いない、探していたあの店だ。

『愛』・・ここだったかと奏は思わず溜め息を吐いた。コンビニもできて街の姿が変わって、コンビニの陰に隠れてしまっているから今まで分からなかったんだ。

見つけたのが嬉しいような嬉しくないような・・。見つからないのなら思い出のままにしておけばよかったのだが、見つけてしまったからには行きたい鼓動が抑え切れなくなってしまった。

奏はこのコンビニで朝食を食べたことを少し後悔した。

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