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マスタード
第3章 リサ・・・
カネは豊かだが愛のない家庭。
両親はリサにはカネだけを与えて愛情を注ぐこともなく、ただいい大学に行って、両親が決めた相手と結婚をして自分たちが経営する会社を継いでくれることだけを望んでいた。

そんな愛のない家庭が嫌でたまらなくてリサは高校卒業と共に家を飛び出してこの街にやってきた。
この街を選んだのは誰にも見つかることがない辺鄙な田舎の街を求めていたからだろう。

ママからリサの境遇を聞いて、あの時「ただいま」や「おかえり」のあいさつをするのは初めてだと嬉しそうに言ったリサの姿を思い出した。
そんな境遇に育ったんなら初めて「おかえり」と家族を迎えたのは本当に嬉しかったんだと思う。リサが初めて「おかえり」と迎える相手に自分を選んでくるたのが本当に嬉しい。

女のコがひとりぼっちで生活していくおカネを稼ぐのはキャバクラやパブが考えられるが、こんな田舎にはそういう店はないから、リサはスナックを選んだのだろう。

いきなり店にやってきて、働かせてくださいと頼んだリサの姿を思い出してママはまた嬉しそうに目を細めた。

働かせるのはいいけど身元ぐらいは確認しようとしたら、少し躊躇って、やがて意を決したようにリサは家を飛び出してこの街までやってきた境遇を打ち明けてくれた。

ママも大阪から飛び出してこの街にやってきてスナックや飲食店勤務をして自分の店である『愛』を経営できるまでになった。
そんな自分の境遇とリサはよく似ていると思った。

ママはリサを引き受けることにして、社宅ということでアパートも世話してあげた。
リサはママを本当の母親のように慕ってくれて、休日には一緒にお出掛けしたり、一緒に食事をしたりと本当の母娘のような生活が始まった。

もういい歳なのに縁がなくて結婚もしていないから家族を持つことは諦めていたママにとってはリサはかけがえのない娘だったと嬉しそうにリサのことを回顧している。

そうか、あのアパートはママがお世話をしてあげたのか。そんなアパートでリサと愛し合ったんだと思うと、まるで恋人の母親に会っているようでドキドキしてしまう。

リサは愛や家族に飢えていた。
そんな境遇は奏ともよく似ているし、妻との関係は不本意で一方的な相手の理不尽によって悪化してしまったが、子供や犬にはいっぱいの愛情を注いできたつもりだ。
そんな奏にリサは惹かれてくれたのだろう。


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