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マスタード
第5章 抱擁
陽葵にはお姉ちゃんがいたことを思い出して、一緒に動物園や水族館に行った時の女のコの顔が浮かんだ。
本当に陽葵によく似ていて、初めて陽葵を見た時には時が止まったり戻ったりしたように思ったのだった。
「美海(みう)は東京にいるのよ」
と愛美は上の娘の近況を奏に説明した。音楽が好きで音楽活動をしていたら事務所にも認められてメジャーにはなっていないものの一応プロになったとのこと。
だから高校も東京の学校にして、大学も目指しているので、東京にいる愛美の姉のところに住んでいる。
「あれ以来会ったこともないのに美海のことまで心配してくれてありがとう」
「陽葵のお姉ちゃんならボクにとっても娘みたいなものだから・・」
夕方になって『囲炉裏』の開店時間になっても大雨は治まるどころか暴風雨になって風は吹き荒れて雷まで鳴り響く有様だった。
「これじゃあ無理して店を開けたって誰も来ないから、お店はお休みにします。今夜はおウチで晩御飯にしましょう」
愛美が休業宣言をすると陽葵は「わ~い」と喜んだ。
「とりあえず雨で濡れちゃったし、お風呂に入っちゃおうか」と愛美はお風呂の支度をしてくれた。
「奏ちゃん、先に入る?」
「いや、後でいいよ。先に陽葵と入っちゃってよ」と平静を装ってはみるものの、ひとつ屋根の下で愛美がすっ裸になると思うと落ち着かない。
そんな奏の心中をお見通しのように「覗かないでよ」と愛美は悪戯っぽく笑った。
「そんなことしないよ」と奏が言葉を発するよりも早く「せっかく、そうちゃんパパがおウチにいるんだから、そうちゃんパパと入りたい」と陽葵が言った。
いきなりそんなことを言われるものだから奏は飲んでいたビールを吹き出してむせた。
「あら、いいじゃない、娘とお風呂に入れるなんて幸せよ。大きくなったら入ってくれなくなるんだから」と愛美は嬉しそうに言った。
「い、いや、女のコがやたらな男に肌なんて見せるものじゃないよ」と奏がむせて涙目で言うものだから愛美はきゃははと笑った。
「やたらな男じゃないよ、パパなんだから。まさか娘を相手に変な気を起こすんじゃないでしょうね」とちょっとからかっただけなのに奏がますます涙目になってむせるものだから、愛美は笑いが止まらなくなった。
と笑ってはみたものの愛美は陽葵が羨ましかった。
本当に陽葵によく似ていて、初めて陽葵を見た時には時が止まったり戻ったりしたように思ったのだった。
「美海(みう)は東京にいるのよ」
と愛美は上の娘の近況を奏に説明した。音楽が好きで音楽活動をしていたら事務所にも認められてメジャーにはなっていないものの一応プロになったとのこと。
だから高校も東京の学校にして、大学も目指しているので、東京にいる愛美の姉のところに住んでいる。
「あれ以来会ったこともないのに美海のことまで心配してくれてありがとう」
「陽葵のお姉ちゃんならボクにとっても娘みたいなものだから・・」
夕方になって『囲炉裏』の開店時間になっても大雨は治まるどころか暴風雨になって風は吹き荒れて雷まで鳴り響く有様だった。
「これじゃあ無理して店を開けたって誰も来ないから、お店はお休みにします。今夜はおウチで晩御飯にしましょう」
愛美が休業宣言をすると陽葵は「わ~い」と喜んだ。
「とりあえず雨で濡れちゃったし、お風呂に入っちゃおうか」と愛美はお風呂の支度をしてくれた。
「奏ちゃん、先に入る?」
「いや、後でいいよ。先に陽葵と入っちゃってよ」と平静を装ってはみるものの、ひとつ屋根の下で愛美がすっ裸になると思うと落ち着かない。
そんな奏の心中をお見通しのように「覗かないでよ」と愛美は悪戯っぽく笑った。
「そんなことしないよ」と奏が言葉を発するよりも早く「せっかく、そうちゃんパパがおウチにいるんだから、そうちゃんパパと入りたい」と陽葵が言った。
いきなりそんなことを言われるものだから奏は飲んでいたビールを吹き出してむせた。
「あら、いいじゃない、娘とお風呂に入れるなんて幸せよ。大きくなったら入ってくれなくなるんだから」と愛美は嬉しそうに言った。
「い、いや、女のコがやたらな男に肌なんて見せるものじゃないよ」と奏がむせて涙目で言うものだから愛美はきゃははと笑った。
「やたらな男じゃないよ、パパなんだから。まさか娘を相手に変な気を起こすんじゃないでしょうね」とちょっとからかっただけなのに奏がますます涙目になってむせるものだから、愛美は笑いが止まらなくなった。
と笑ってはみたものの愛美は陽葵が羨ましかった。