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マスタード
第9章 愛ふたたび・・
奏はグルビーズや星志が推しているアイドルや他のアイドルも応援するようになって、いつの間にか、今までは息子の星志でさえも理解不能だと思っていた、いわゆるオタクという世界に足を踏み入れていた。

40代も半ばになったのに推し事を始めるようになって人生で初めての経験も多々あってなんだか新鮮だった。

ライブハウスというところにも人生で初めて行った。グルビーズがライブをやるというので行ってみたのがライブハウス初体験だった。
最初は勝手がよく分からずに困ったりもしたものだが、段段と慣れてくるに連れて、そこはとても居心地のいい場所になっていった。

チェキというのも初めてやってみた。
ステージショーを見て、写真を撮ったりサインをもらったりと星志が子供の頃に連れて行ってあげたヒーローショーとやってることは変わらないと思うと何だか笑えてきた。

何も買わないのにアイドルに話しかけるだけの無銭ガッツキは許されないので、チェキやグッズを買ってサインをもらう僅な時間がアイドルと触れ合える至福の時間で、小さな写真や僅な時間の中に大きな宝があるんだということも知った。

中には、一体どこからそんなカネが出てくるんだというような大金を毎回毎回使う人もいて驚きもしたが、会社や事業を成功させているような富豪もいるしい。

ふと『囲炉裏』のオーナーの石垣の顔が思い浮かんで、あの人がこういう世界を知ったらハマって景気よく物販にカネを使いそうだと思ったら何だか面白くなった。

いずれにしても富豪でも何でもない自分たちは無理のない範囲でやることが楽しく長続きするコツだなとも思った。

大枚ははたけないが、ステージを精一杯盛り上げることで応援することにした。
ステージの応援はウイルスが流行する前はスゴかったと現場でできた友だちが教えてくれた。

大声でのコール&レスポンス、推しメンへのガチ恋向上や両手に光る棒を持って踊るオタ芸ダンスなど、奏には想像もできない未知の世界だ。

しかし、ウイルスの世の中になり、感染防止として殆どの現場はコールや派手なパフォーマンスを禁止している。

奏はスケッチブックにメッセージやイラストを大きく書いてステージに文字や絵でコールを贈ったり、簡単な振りコピをしたり、小道具を用意したりで盛り上げた。

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