この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マスタード
第9章 愛ふたたび・・
今はオタクであることは隠して推し事で使うグッズは全部バッグの中にしまってあるのだ。
この気さくなマスターはどことなく奏が最初に『囲炉裏』に行った時に愛美の夫で大将だと間違えた還暦の男に似ているような気がする。
せっかく愛美や陽葵のことは忘れてグルビーズを楽しもうと決めたのにと少しマスターを恨めしく思ったりしてしまう奏とは反対にマスターはご機嫌で鼻歌を歌って小躍りしている。
何も訊いたワケでもないのにマスターは明日は店も休みで、久しぶりに遠征してももクロのコンサートに行くんだと嬉しそうに話し出した。
「違ってたらごめんなさいね。お客さんもどこかのアイドルさんのオタクだったりするんですか?もしかして同志とか?」とマスターは嬉しそうに話を振ってきた。
「えっ、そんなふうに見える?」
奏は慌てて自分の全身やバッグを見直して確認した。オタクだと分かるようなモノは何ひとつ見えないようにしたはずなのに何でオタクだと分かるんだろうと思った。
その奏の様子を見てマスターは愉快そうに笑いながら、「職業柄蕎麦屋や料理人などの同業者のオーラが感じられるように、こっちの世界の同志や同業者のオーラも感じられるんです」と言った。
完全に隠しているつもりなのに筋金入りのオタクにはオーラが感じられてしまうのかと感心した。自分は普通に人と会って、この人はオタクだと感じることはまずないので、マスターのように筋金入りのオタクにはまだ程遠いと思った。
ふと職場にいるAKBやももクロのオタクの教師が思い浮かんで、あそこまで分かり易ければ誰でも分かるけどと思ったら笑えてきた。
「よくぞ見破った、天晴れだ。でも残念ながら同志じゃないんだ。ボクはこっちなんで」
と奏は丁寧にクリアケースに入れて持ち歩いているグルビーズのフライヤーをバッグから取り出してマスターに渡した。さっきは思いとどまったが、オタバレしたなら隠す必要もないから布教することにしたのだ。
「何ですか、これは?」
とマスターは目をパチパチさせる。ももクロ一色のマスターは地下アイドルなんて全く知らなかったのだ。が、とってもいい歌を歌ってるし、MCもスゴいしと奏が力説すると興味を示し始めた。何より蕎麦の歌を歌っていて、だから今日の昼は蕎麦屋さんにしたんだという話に興味津々になって検索して動画で蕎麦の歌を見たら一発で大ハマりした。
この気さくなマスターはどことなく奏が最初に『囲炉裏』に行った時に愛美の夫で大将だと間違えた還暦の男に似ているような気がする。
せっかく愛美や陽葵のことは忘れてグルビーズを楽しもうと決めたのにと少しマスターを恨めしく思ったりしてしまう奏とは反対にマスターはご機嫌で鼻歌を歌って小躍りしている。
何も訊いたワケでもないのにマスターは明日は店も休みで、久しぶりに遠征してももクロのコンサートに行くんだと嬉しそうに話し出した。
「違ってたらごめんなさいね。お客さんもどこかのアイドルさんのオタクだったりするんですか?もしかして同志とか?」とマスターは嬉しそうに話を振ってきた。
「えっ、そんなふうに見える?」
奏は慌てて自分の全身やバッグを見直して確認した。オタクだと分かるようなモノは何ひとつ見えないようにしたはずなのに何でオタクだと分かるんだろうと思った。
その奏の様子を見てマスターは愉快そうに笑いながら、「職業柄蕎麦屋や料理人などの同業者のオーラが感じられるように、こっちの世界の同志や同業者のオーラも感じられるんです」と言った。
完全に隠しているつもりなのに筋金入りのオタクにはオーラが感じられてしまうのかと感心した。自分は普通に人と会って、この人はオタクだと感じることはまずないので、マスターのように筋金入りのオタクにはまだ程遠いと思った。
ふと職場にいるAKBやももクロのオタクの教師が思い浮かんで、あそこまで分かり易ければ誰でも分かるけどと思ったら笑えてきた。
「よくぞ見破った、天晴れだ。でも残念ながら同志じゃないんだ。ボクはこっちなんで」
と奏は丁寧にクリアケースに入れて持ち歩いているグルビーズのフライヤーをバッグから取り出してマスターに渡した。さっきは思いとどまったが、オタバレしたなら隠す必要もないから布教することにしたのだ。
「何ですか、これは?」
とマスターは目をパチパチさせる。ももクロ一色のマスターは地下アイドルなんて全く知らなかったのだ。が、とってもいい歌を歌ってるし、MCもスゴいしと奏が力説すると興味を示し始めた。何より蕎麦の歌を歌っていて、だから今日の昼は蕎麦屋さんにしたんだという話に興味津々になって検索して動画で蕎麦の歌を見たら一発で大ハマりした。