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スカーレットオーク2
第10章 10 小夜子
小夜子は和夫との出会いを思い出していた。
これからという時にピアニストの小夜子は手を痛め演奏家としての道が閉ざされた。
些細な怪我かもしれないがピアニストとしては致命的だった。
ピアノへの執着と絶望感とプライドを保つため、慈善事業のつもりで福祉施設で演奏活動を始める。
福祉施設には様々な年代の様々な症状を抱えた人がいた。
最初は全くやる気が出なかった。
――クラシックのクの字も知らないような人が私のピアノを聴いてどうするのか。
そんな現状を知らないかつての仲間は褒め称えるが、小夜子にとってステージ上から下を見るような憐れみの賞賛にしか感じられなかった。
ある時慰問した福祉施設で設置してあるピアノを見て愕然とする。
調律はおろか手入れも掃除もろくになされていなかった。(これピアノなの?)
古びた黒い木の箱にしか見えなかった。
壊すくらいの勢いで弾いた。(どうせ誰も聴いていない)
今までの鬱憤を晴らすようにピアノに当たり散らした。
何を弾いたのかさえ覚えていないくらいに。
自分の指にさえ注意を払わなかった。
体力の限界を感じて演奏を終えたとき大きな歓声に包まれる。(え?)
これからという時にピアニストの小夜子は手を痛め演奏家としての道が閉ざされた。
些細な怪我かもしれないがピアニストとしては致命的だった。
ピアノへの執着と絶望感とプライドを保つため、慈善事業のつもりで福祉施設で演奏活動を始める。
福祉施設には様々な年代の様々な症状を抱えた人がいた。
最初は全くやる気が出なかった。
――クラシックのクの字も知らないような人が私のピアノを聴いてどうするのか。
そんな現状を知らないかつての仲間は褒め称えるが、小夜子にとってステージ上から下を見るような憐れみの賞賛にしか感じられなかった。
ある時慰問した福祉施設で設置してあるピアノを見て愕然とする。
調律はおろか手入れも掃除もろくになされていなかった。(これピアノなの?)
古びた黒い木の箱にしか見えなかった。
壊すくらいの勢いで弾いた。(どうせ誰も聴いていない)
今までの鬱憤を晴らすようにピアノに当たり散らした。
何を弾いたのかさえ覚えていないくらいに。
自分の指にさえ注意を払わなかった。
体力の限界を感じて演奏を終えたとき大きな歓声に包まれる。(え?)