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大人が寝る前に読む物語
第2章 かぐや姫
「姫…姫…あぁ…本当に姫様じゃ」

泣きじゃくる翁とその妻に起こされ
私は目が覚めた


懐かしい人に囲まれ
懐かしい香りに包まれた


帰ってきた……
帰って来ることが出来た……


私の目からも涙が溢れて止まらなかった


「姫様…そのお子は御門様の…」

「そうです…無事に産まれました…」


丸々とした可愛らしい子を翁に抱かせる

「おぉ…なんと…凛々しいお顔をしておる…」

涙を流して喜ぶ二人を見つめ
月では誰にも祝って貰えなかった出産を
初めて心から喜ぶ事が出来た…



「こうしてはおられません…
私は帝に使いを出して参りましょう…」





こちらの世界では私がいなくなったあの日から
半年の月日が流れていた…

もっと長いこと、ここを留守にしていたように感じる


我が子をそっと布団に眠らせると
屋敷の庭に出て外を眺めた



空を見上げ、見えない月に向かって


父様…母様…ごめんなさい

どうか…どうか許して…
こんな娘だけど…私はここに戻ることが出来て幸せなのです…


そう…心の中で呟いた



「姫様……食事の支度が整いましたよ…」


これからはここにいた時以上に
この2人を本当の両親と思い、大事にしよう


食事を済ませ、風呂に浸かりのんびりと過ごした


こんなに心穏やかに過ごすのはいつぶりだろうか…



あの森の小屋はまだあるのだろうか…


乳をたらふく飲んでスヤスヤと眠る我が子を翁に任せ
森へと足を踏み入れた


そこは何も変わらず
あの頃のままで向かい入れてくれた



澄んだ空気を胸に吸い込み
小川のせせらぎに耳を澄ます

時が戻ったようだ……


目をつぶり柔らかな草の上に身を横たえた



「随分と長い散歩だったな…」

目を開けずとも分かる愛しい人の声…


ゆっくり身体を起こした瞬間──
愛しいお方の腕の中にいた


強く強く抱きしめられ
嗚咽を漏らし泣いた


「会いたかった…」


長い長い口付けを交わし、
何度もその身体を抱きしめあった



「もう離さない…」


うっすらと月が空に浮かび始めた頃
私達は誓う


もう離れはしないと──



[完]
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