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不埒に淫らで背徳な恋
第2章 【秘密を共有するのは罪ですか?】

どことなくぎこちない会話。
仕方ないよね。
いつもの出る前のキスやハグももうない。
先に玄関を出る私は稜ちゃんを待たずにエレベーターのボタンを押す。
エレベーターの中でも二人きり。
キス……出来やしないよね?
自業自得だから。
まだ私の許しは下りてないからね。
駅でバイバイも目を合わすのは一度だけ。
振り返りもしない。
背中に視線を感じながら私は無言で稜ちゃんの心に棘を刺していくの。
ごめんなさい。
あんなふうに気持ち踏みにじられてどこかでホッとしてるなんて。
心が離れるきっかけを与えてもらえたみたいで……
しかもこっちが優位に立てるシチュエーション。
頭の中じゃ喜んでる。
だからって私のしたことは許されることではないんだってことも理解してるはず。
はずなのに……
「畠中チーフ、おはようございます」
「おはよう、佐野くん」
何気ない挨拶でも視線に込めてる。
あれから二人きりになれば少し甘えてくる彼だけど、充分距離を保って会社での立場やわきまえを教えてるつもり。
つまり、完全にシロと思わせる二人でなければならない。
移動中も取引先でも社員証をつけている間は私たちにプライベートはないの。
勿論、他の社員が目の届く範囲も注意が必要だね。
我慢……させ過ぎちゃうけど彼はわかってくれている。
「10秒だけ…」と社用車の中で手を繫ぐ。
10秒経ったら手を離しあの笑顔を見せてくれる。
そんなことでチャージ出来ましたって言わせてる。
抱きしめたい気持ちをグッと抑えてハンドルを切るの。
本当はどこかで停めてキスしたい。
でもそんなことしたら自分が止まらない気がする。
それこそ誰かに見られていたら今までの努力が水の泡だ。
ほんの少しの欲情に負けて失うわけにはいかない。
「ただいま戻りました〜」
「あ、畠中チーフ!大変です〜」
予定表ボードを消していると後輩のみなみちゃんが待ってましたとばかりに来た。
「どうしたの?」
「アレ……なんですけど」
迷惑そうに指差した方向を見てみるとギョッとした。
ある一角だけ空気がどんよりしているのが見てわかる。
同じく社員の田中くん。
みなみちゃんとは同期で2年目なんだけど……

