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生徒会長・朝倉美咲
第10章 生徒指導室へ
生徒会室から出ると、
「おいっ!踏まんでくれ」
足元でダミ声が響いた。

ビクッとして見ると、葛巻が廊下に散らばったプリントを拾い集めていた。

顔を見た途端、最近見た悪夢を思い出してしまう。

「おお、生徒会長どのか
悪いが手伝ってくれんか?」
気持ち悪い猫なで声で言う。

断わるわけにもいかないので
細心の注意を払ってしゃがみこむ。

『俺にセクハラされたいんだよな?』

『素直になれよ』

『エロい身体しやがって』

『グチョグチョじゃねぇか』

甦る台詞の数々を、首を振って頭から追い出した。


膝をついてプリントを集め
差し出すと
「すまんな」
葛巻の伸ばした手が美咲の
乳首をかすった。

「ひゃんッ」

美咲の手から滑り落ちた紙束がまた散らばる。

「おいおい、なんだよ
急にヘンな声だして…」

「いやぁ!」
パンッ

動揺しているところに葛巻が近寄ってきたため、反射的に美咲は相手の頬を叩いてしまった。

廊下にいた生徒が何人か
こちらを窺っている。

「朝倉、お前…」

葛巻が怒気を孕んだ声で呻いた。

美咲自身も自分のしたことに驚き
「す、すみません!私…」
すぐに謝ったが、

「ちょっと来い」

廊下に紙を撒き散らしたまま
葛巻は先に歩きだした。
今回ばかりは、美咲も大人しくついていくしかなかった。
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