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性に溺れる私
第9章 【甘い蜜】
でも待って。
さっきの留守電、何か遠くで聞こえてた気がする。
もう一度再生して耳を澄ました。
やっぱり……会いたいって言ってくれた後に電車の音…?
駅の近くに居るの?
先生は車だよね?
しかも雨の音もはっきり聞こえてた。
車でもなくて外からかけてきていたんだとしたら……一人で居るの?
わからない……全然よめない。
でも電車の音がしてたんなら駅前…?
学校近くの駅…?
パーカーを手に取り走り出してしまった。
ジッとなんかしてられなかった。
本能的に行動してしまう。
居なくてもいい。
確かめたい。
先生、私はあなたの残像を探してこの身を焦がす。
黒のキャップ帽にパーカーのフードを被り黒のマスクで身バレしないよう傘を差し家を飛び出した。
雨ですぐ足元がびしょ濡れになる。
宛てもなく行き着いたところに果たして先生は居るのだろうか。
走りながら意を決して電話をかけた。
呼び出し音に爆発しそうな心臓。
先生以外の人が出たらもうそこで私たちはジ・エンドだ。
それでもがむしゃらに走ったっていいよね…?
賭けたい……これが運命なのかどうか。
信じたい……結ばれたい……繋がってたい。
先生………先生………先生……………
耳から離れない先生の声。
会いたい……私もです。
触れたい……指先だけでもいい。
どうしてあんな寂しそうな声で言うの。
ひた隠しにしてきた想いが溢れ返るじゃない。
結局、電話は繋がらなかった。
電源切った…?もしくは切られた…?
もどかしい気持ちがより加速する。
息を切らし公園まで辿り着いた。
ここを通り抜ければもう駅だ。
久しぶりに全力疾走しちゃった。
電車に乗って、まず学校の最寄り駅に向かおう。
そこに居なかったら……また電話かけてみようか。
雨の音が激しくなってる。
ピタッと脚が止まる。
というより動かなくなった。
視線が捉えた場所。
後ろ姿でもすぐにわかる。
公園のベンチ……長い襟足。
見間違えるはずがない。
そっと歩み寄る距離……数メートル。
傘も差さずに何してるの…?
風邪ひくじゃん……バカ。
いい大人が雨に濡れて何自暴自棄してんのよ。
どうして此処に…?